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賞味期限の数字が奪うもの

by 沓澤 優子
g.o.a.t

That was tasty.

珍しく夕食の支度に参加しようと親世代の台所に立つと、シンクにクミンシードがはりついた皿が置かれていた。母が作った料理でないことは明白で、気になって尋ねると私が持ち帰った店の残り物だという。

サツマイモをクミンパウダーとクミンシードで炒めたレシピだったが、それは先月のメニューだ。突然の大雪で閑散とした日の残り物だから、控えめに考えても二週間は過ぎたか。

母いわく、もうダメだろうと冷蔵庫から出したのだが、見た目も変わらず変な匂いもしない。試しに食べみたら全然変わりなくて驚いたという。

こちらにすると嗅覚を頼りに口に入れてみる冒険心にこそ驚くのだが、冷静に考えると生き物として至極まっとうだ。商品に押された日付でしか食べ物の安全がわからないほうがよほど危険と思い直し、母を見た。具合は悪くなさそう。

ハーブやスパイスは殺菌作用があるものも多い。味付けの塩麹の功もきっとあるだろう。でもこんなに長く腐らせないとは。

植物の力は底知れないな。 母のたくましさも。

綿々とつながれてきた防腐や保存のための知恵が、商品化された食に消されていくのだと思うと、印刷された無機質な数字の羅列がとたんに憎らしいもののように思えてくる。

君たちには頼りすぎないようにします。


沓澤 優子
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